地の果ての見たこともない夢 ...... 10
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「ああ……なるほどね」
 何となく、話が見えてきた。
「その人って、年上の人?」
「うん、かなり」
 真剣に打ち明ける様子は、それが少女の切実な悩みであることを窺わせた。憂いのある表情が、彼女の美貌を一層際立たせている。
 喋ってみると、これまたびっくりするくらい怪しい口調のオレ女だったが、見た目の美しさが些細な欠点をすべてカバーしてしまうかのように、不思議な魅力となって、気付けば店員は、引き込まれるようにその深刻な問題に取り組んでいた。
「それなら、大人っぽさを狙うより、清楚系でまとめるのは正解かもね」
「そうなの?」
「例えば黒いカラーは、いかにもアダルトで妖艶な感じだけれど、ホラ、こういう白いレース使いだと、清純で繊細な感じが強調されて、若さをアピールするにはぴったり。相手の人も、これよりこっちの方がドキドキするんじゃないかなぁ」
「おお! そうかもしんねー!」
「ホントは、その人の趣味に合わせられれば一番いいんだけれどね」
「……趣味……かぁ。オレがあんまり知らねーからかな、ホント、何言ってるかわかんねー時の方が多くってさぁ……」
「じゃあ、いろいろ着てみて、ピンとくるものを探してみようか」
「他のも試してみていいの?」
「いいよ。あ、そうだ! ねぇ、あなた、今、時間が空いてたら、ちょっとだけでいいからモデルのバイトしてみない?」


 いろいろ試着できるし、最新の商品知識もつくよ。腕のいいカメラマンがいるから、可愛く撮ってあげるね、と半ば強引に誘われたが、それはナルトにとっては願っても無い渡りに船だったった。
 店長や店員さんたちに褒められながら、着せ替え人形のように着替えさせられる。呼び出された写真家の要望通り、店のディスプレイのソファやスツールの上でポーズを取って、撮影は順調に進んだ。
 一生分くらい、女物の下着をじっくり見たような気がする。実際に着てみて、作りや形も頭に入った……というよりは身体で覚えた。この知識は、おいろけの術を進化させる強力な武器になるはずだ。
 撮った写真は店のカタログに使うと言う。
「いやぁ、こんなに可愛い子にモデルをやってもらえるなんて、幸運だなぁ」
「なかなかイイ子が見つからなくてね。これだけ着こなせるなんて、キミはとても才能があるよ」
「本当に凄く助かったわ。ありがとうね」
 人の役に立って感謝される、というのは、やはり良いものだ。店長さんは謝礼金やを用意してくれたが、それは受け取れない、と断った。ならば現物支給で、と提案され一瞬承諾しかけたが、正直、実物を持たされても困る。同じものは術で再現できるのだから。
 そのかわり、と言うのもおかしいが、ナルトはたくさんの称賛の言葉と、現像された写真をしっかりゲットした。
 意気揚々と宿へ引き上げる。
 最初は、初めて見た大人の女のめくるめく世界に圧倒されてどうなることかと思ったが、それだけの手応えはあった。
 かなりの収穫だ。
「たぶん、もうオレの方が詳しくなっちゃったもんねー! へへっ、もう文句は言わせねー。見てろってばよ!」


 宿に戻り、勢い良く部屋に駆け込んだが、そこに師匠の姿は無かった。
「あ、あれ、……いねぇ……」
 無意味に室内を歩き回り、庭まで覗いたりもしてみたが、もちろん探す相手の気配はない。
 浮かれた気分はあっという間にしぼみ、ナルトは立ち尽くした。
 息抜きの散歩にでも出掛けたのだろうかと考え掛け、はっと気付いた。









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