バースデイ ...... 12
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 もう力は入らない。息を弾ませて、深い充足感と頭も目の奥も真っ白になるような恍惚感を存分に味わいながら、しかしどうすることもできない心地良さに目を閉じた。腰の奥にわだかまる熱が全く薄れていかないのが辛い。
 気持ちが良過ぎて、苦しかった。
 しかも、これで終わったわけではない。未だ、身体は自由ではなく、相手の支配下にある。
 とろりと瞳を潤ませ、虚ろに視線を中空に彷徨わせた。放心しながら、自分を固く抱きしめて離さない腕と、繋がれたままの身体の芯を感じ取り、安堵とともに受け入れる。
 かろうじて動く指を折れば、硬い手触りの髪が触れた。
 一体何時から伸ばしているのか、聞いたことはなかった。長い髪だ。この髪に身体を埋めるように、座る師匠の背中に自分の背を預けるのが好きだった。下手に動けば、背と背の間でその髪を引っ張ってしまうことになり、痛い思いをさせてしまうこともままあったが、そういう時の彼は何故かとても優しくて、すげなくあしらうこともなく、ナルトの甘え方を許してくれた。
 切ない気持ちになって、眉根を引き絞る。
 こんなに傍で、誰かに寄り添って、ぴったりと隙間なく肌を合わせて良いものだとは、やっぱりこうしている今でも、ナルトには現実離れしたことのように思えて、何だか信じられない。こんなふうに大好きな人に慈しまれて可愛がられるのは、遠い国の知らない物語の中の、何不自由なく恵まれて、ちやほやと育てられたお姫さまのようじゃないかと思う。
 まるで自分じゃないみたいだ。
 だが、そんな弟子の心中など知る由もなく、師匠は躊躇なく手を伸ばし、我が物顔で日々愛情を注ぐ。
 深く息を吸い込めば、未だ圧迫される身体の奥がずくりとうごめき、次の瞬間にはさも当たり前のようにぐしゃりと潤んだ。
 内股が震える。
 曲げたままの膝がぴくりと動く。それに伴い、耳元に掛かる自来也の荒い息使いが、また少しだけ乱れた。
 同時に、ナルトの意識もまた、相手を銜え込んでいるそこへと還ってゆく。
 受け入れている粘膜は、甘く濡れたまま、ずっと蠢動を繰り返し続けていた。穿つものにねっとりと巻きついて、最高の待遇で圧迫しながら包みこみ、今また迎合の動きを開始する。
 応じて、のしかかる身体の抑え気味だった揺さぶりが、再び強められていった。
 蠢き続けるその最も奥にある口は、飲みたいものを飲ませてもらえないのが不満なのだ。最高に素敵な絶頂を味わったのに、流し入れられるのを待っているのに、まだ出してもらえない。注ぎ込んでくれない。早く欲しくて、餓えていた。
 だから、押し付けられる先の部分を緩く咬んで、とろけながら、ちょうだいちょうだいとねだる。
 そういう内側の、女の部分で起こる現象の逐一を、堪能し、満喫するのが、自来也は好きなのだった。大人というものは、男と女というものや、こういう行いは、なんて貪欲で、ふしだらでいやらしくて勝手なんだろうと、竦み上がる心地だ。
 でも、嫌ではない。悪いものではない。いいことには間違いないようだった。まるで世の中の理の一端を解き明かしでもするような、ナルトにとっては、とても難解な問題ではあるけれど。
 しかも自分は、そのいいことを相手に提供する力があった。この正真正銘造り物でありながら、生きが良くて瑞々しい身体。何度流し込まれたところで、術を解けば交歓した体液は幻と消える、使い勝手がよくて、ある意味、究極に狡い技だ。
 そういう力を使うことで、ここまで深く交われる。
 抱きしめられて、放されることがない。
 中の疼きは再び緊急性を増しつつあった。また荒々しく揺さぶられ、突き込まれて、湧き上がる感覚を散らすために首を振る。
 敷布の上に流した長い金髪は、もつれにもつれて酷い有様になっていた。
「は、ぁ……あ、ん」
 喘ぎに再び声が混ざり始める。
「気持ちいいか、ナルト」
「あ、あ、あ」
 唐突に声を掛けられて、ずきんと肺の内側が痛んだ。
 本当に、この声が大好きでたまらないと思う。
「ひ、ぁっ」
 喉を震わせて、悲鳴を途切れさせる。与えられる何もかもが気持ちよくて、脳内で馬鹿の一つ覚えみたいに気持ちいい気持ちいいと譫言を繰り返す。気が狂いそうだと思った。
 その後は、ただ愉悦に溺れ、意識を揺蕩わせ、声もなく穿たれ、喰らい尽くされていくだけだった。


 再度、相手を奈落の底のような快楽へと突き落とし、その特別な収縮を利用して、今度こそ奥へと注ぎ込んだ。酷な悦楽に悲鳴を上げてよがり狂う相手を押さえ付け、きつく狭められた中、熱くまとわりつく肉管の奥へと、思うさま流し入れる。
 まるでそれが、日々注いでいる愛情の実体であるかのように、出したものを飲ませてゆく。完全に注入が終わるまで待ち、その後も遠慮なくその襞の弾力を使って、最後の一滴までを絞り取っては、なすりつけるようにしごいた。
 慣れてきたとは言え、やはりそれは無体な行いだった。
 ようやく終えたというのに、それでも尚惜しむようにこすりつけてしまう自分のしつこさを、どうしようもく思いながらも、やはり、こころゆくまで蕩けるような体温を愉しむのをやめられない。
 そこまでし終えてからやっと、長い時間、相手を責め苛んだそれを、引き抜いた。
 抱き締めて、こめかみに口付けを落とし、全部が終わったことを報告する。赦しを請う意味もこめた仕草でもあった。
 同意を得ているとは言え、やはり大人の身勝手さは言い訳しようもなかった。そういう行為だ。
 身体を離し、ようやく相手の足の間から立ち退いた。
 腰の下の枕を引き抜いて、楽な姿勢で横臥させる。膝を折り曲げ身を丸めた恰好で、ナルトは敷布の上にころりと転がった。
 脇腹を上下させ、ゆっくりと呼吸しているのを確かめながら、自分も添うように傍らへ横たわる。
 毎回なのだが、大人げないと自覚しつつも、また本気で全力を尽くしてしまった。強い充実感を得られるのと同様に、かなりの疲労や倦怠に見舞われる。
 が、相手の消耗は、それ以上だろう。
「気分は……どうだ」
 ナルトは途中で何度か意識を失ったようだったが、今は正気を保っていた。
 尋けば、
「……うん、へーき……」
 小さく答えが返ってくる。
 満足気に惚けた気怠い声音に、自来也は微笑む。
 ナルトの健気さが愛おしくて仕方なかった。
 月の光は少し角度を変えたようだが、その表情は相手に見えたようだった。
「へへっ」
 ナルトも機嫌の好い声で低く笑う。 
 少しでも、安堵や充足を与えられただろうか、と思う。
 頬に指を伸ばして肌を撫でた。
 その不足を満たし、飢えを埋めて潤し、傷を癒す力に、なっただろうか。
 この子の未来への歩みを、支える礎に……なれているだろうか。









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