差し込む月の明りだけでは、互いの瞳に映っているものまではよく見えない。
が、絡み合う視線の焦点が結びあう瞬間は分かった。
引き合うように、まるでそうするのが当然のように、そのまま唇を合わせる。
乱れた息は吸い取られ、最初から深い口付けになった。
あっという間に、歯列を割って舌が侵入してくる。口内をたちまち占拠されてしまう。ナルトも懸命に自来也の舌に自分の舌を這わせてようとするが、まだ稚い舌技では反撃のしようもない。
歯茎、上顎の裏と舌の付け根。
感じる部分を間違いなく舌先で撫でられては、包み込まれるように全体を舐め上げられる。頭の芯がぼんやりするようなと心地良さを味わった。
首に腕を回してしがみつく。角度を変えながら、時折許される合間に息を継ぎ、かと思えばまた深く舌を差し込まれ、身勝手な蹂躙を受ける。
そうされる間も、膝の上に座らされた体勢は変わらず、足の間を深く探られる悪戯は容赦なく再開されていた。
二本の指は、またもや意地悪にくねり動き、濡れそぼった肉はくちくちと音を立てる。軟い割れ目とその中をしつこく構われながら、同時に奥の方、敏感な神経が集まる箇所を揉みほぐされ、かと思えば前の襞に隠された核を抜かりなく丹念にいじられた。
「っ、……っ!」
声は出せない。しかし、複数箇所にも関わらず的確に与えられる悦楽は、骨盤から背骨を電流のように駆け昇っていく。
ぴくぴくと全身を震わせながら、だがどうすることも出来ず、ただ続く口付けと悪戯を受け入れるしかなかった。
様子を窺われているのが、わかる。繋がる口内と指で、身体の反応全てを気取られてしまっていることが、ひしひしと伝わってくる。
そうされながら今度は奥まりの箇所へ、ぐっと指の腹を押し当てられてしまった。
「!!!」
瞬間、目の奥に光が散るような感覚を味わう。加えて細かく撫でられ、全身が総毛立つような快楽に、たちまち貫かれた。
両方の膝がぎくんと跳ね上がり、がくがくと腰までも震わせる。
その強い反応を、自来也は差し入れた指や身体を抱き止める肌だけでなく、口の中や舌先でも感知し受け止める。
感度の高さに気を良くして、入れた指で、先程より少しきつめに擦り上げてみたりもする。
「……っ!!!」
あまりに強い快感に、ナルトは今度こそ背筋が反りかえるほどに全身を硬直させた。
目を見開き、耐えきれず唇を振りほどいて呼吸を求めてみたが、がっちりと後頭部を抑えられていて無理だった。それだけで師匠の思惑を悟り、彼は流し込まれる唾液を、喉を鳴らして飲み下しながら、下肢をよじって自分を責め続ける指を喰い締める。強制される悦に身を任せ、内股を震わせながら、まるでそれでも足りないとでも言うかのように、下肢をひねった。
とろとろと新たに湧き出した体液が流れだすのを感じながら、羞恥に身悶える。
自来也は、相手の求めを掬い取りながら充分に時間をかけて味わい尽くした。指を動かしてやるだけで、繋げた口内の、頬骨から喉奥までが戦慄くのが分かる。
与えれば面白いように良い応えを返す身体に、指技と舌技を施して遊び、翻弄した。
打ち続く気持の良さに、さすがに辛くなってきたのだろう。合間の呼吸はせわしなさを増すばかりだ。
体温を上げ全身から汗を滲ませ始めたナルトの身体を、一旦解放する。力なく開く唇を、思う存分吸い上げながら離し、爪にまでまとわりついてくるぬめった弾力を惜しみながら、無骨な指を細い肉管から引き抜いた。
「は、ぁ、……はぁっ、はぁっ」
ナルトはぐったりと身体を預け、肩口で激しく喘鳴する。突然自由を得た気管支の、当然の反応だ。しばらく呼吸が整うまで、楽になるように背中をさすってやる。
だが、そうされても、そうされたで、ナルトには不満なのだ。
「ど、して」
「なに?」
「や……だ、ゃ、やめな、いで」
「……」
「おねがぃ……い、行かな……」
行為を中断した時に出る癖だった。今まで途中で止めて最後までしなかったことなど一度もないのに、最中に少しでも身体を離すと、いつもまるで怯えるように嫌がる。自来也にはどうすることも出来ない。若さゆえの旺盛さだけからそう言うのであれば、何も問題はないのだが。
威張って言うことではないが、こちらにも歳に応じたペース配分というものがあるのだから、勘弁してくれと思いつつ宥めることになる。
「……落ち着け。途中でやめたりしねーだろ、ワシは。いつも」
「でも……い、いやだ……っ!」
「何が」
改めて問いなおしてやれば、
「……」
ナルトは少しの間、押し黙った。
「……わかんねぇ……」
少し冷静になったのか、そう零すと、彼は自分から身体を離す。
俯いて何か考え込むのかと思ったら、違った。ナルトはそのまま上半身を屈みこませて、自来也の足の間へ顔を寄せる。
芯を持って頭をもたげているものを手に取り、そのまま唇を寄せた。
「……ナルト」
「お願いするなら、その前にやることがあるってばよ……」
教えられた手順通りに、先端に軽い口付けを送る。わざと、ちゅ、と音を立ててそうすることで、相手の耳を愉しませることも忘れない。両手の指を使ってくびれや窪みを辿り、筋を探って舐め上げた。
唇を舐めて濡らし、そのまま口内へと取り込む。
「……っ」
与えられる快さに、自来也は眼を眇める。自分の膝の間に顔を埋める相手の後頭部を見おろし、その長い髪に指を差し入れ、頭蓋を包んだ。
ナルトの貪欲さは回を重ねるほどに増してゆくようだった。
今日は彼のお祝いの日なのだから、本当ならこれをさせるつもりはなかったのに、いつも欲しがってがっつく前にすることをしろと躾けておいたのが、今回は裏目に出る。
せっかくの健気な奉仕に水を差そうとは思わないが、どうにも後ろめたい。
舌で包みこむように全体を舐め上げられる。唇で作った輪で掻き上げられるように吸い込まれ、また押し出され、繰り返す。
特に、上顎から喉奥にかけての粘膜の、えもいわれぬ硬さと柔らかさの使い分けが抜群だった。そこで頭の部分全体と先端を擦り上げられ、そうしながら尖らせた舌でくびれと裏の筋を丁寧に舐め上げられて刺激されると、もうたまらない。
その上、充溢して起ち上がる幹を支えられながら、その器用な指は嚢の裏の感じやすい部分までを、やわやわと手抜かりなく揉んでくる。
まだ数回しかさせていないのに、
(上手くなったもんだのォ……)
心地よさに大きく息を吐く。
(コイツ、こっちのセンスも抜群だ。まったく)
ちゅぱちゅぱと唾液を塗り込める卑猥な音が耳に届く。歯が当たることも全くなく、上手に舐めしゃぶられる。頬の内側の柔らかい肉がねっとりと絡み付き、感じやすい筋や皺に沿って舌先がちろちろと行き来する。かと思えば柔らかく敏感な先端とその周辺を優しく舐め上げられる。
ぴくり、と自身が反応して体温が上がり、血が集まってくるのが分かった。
堪らなくいい。
髪に差し入れた指で、応えるように頭皮を撫でる。掌で耳の裏や項まであやす。少し力を込めて、その上顎と喉奥の具合の良い場所を、もう少し使わせて欲しいと伝えると、ナルトは従順に、再び喉奥まで自来也を招き入れる。
最高だった。どんな男でも、いつまでもこうしていたいと願うだろう。ますますいきり立ってしまうのを感じながら、じっと堪える。
が、次に、ずるりと思うさま吸い上げられそうになって慌てた。
「……っ!!! ナルト!」
さすがに一旦踏み止まり、慌てて髪を掴む。再び相手を自分の身体から引き剥がす羽目に陥った。
「こ、こら、バカっ。これ以上はダメだ、もういい」
「……な、なんでだよっ?」
またもや突然中断させられて、ナルトの抗議の声は、今度こそ悲痛な叫びと化す。
「お前、上手過ぎるっつーの!」
「ふぇ?」
「だいいち、今日はお前の祝いなんだから、そもそもこれはしなくていい。むしろワシにお前を可愛がらせろ」
「ひ、ぁ」
何やら言い訳めいたことを早口で言いながら、自来也はまた相手の身体を抱え上げた。今度はどんな体勢に変えられるのかとナルトは身構えたが、ゆっくりと下ろされ、組み敷かれたのは、すぐ傍に敷いてあった布団の上だった。
ほっとして、息をつく。
禁・無断複写転載転用 リーストアルビータ