女を可愛がるのが大好きな、好色な性質をもう隠そうともしないその笑みを目にして、身体は如実に応えを返した。男を深く咥え込んだ腰が、ついに、意思とは関係なく小刻みに震え、動き始める。
「あ、ぁ、や、ぁっ」
（なん、で……！？）
　訳が分からない。
「無理しなくていい。動き過ぎると終わった後が辛くなる」
「ち、が」
　首を振って否定する。動きたくて動いているわけではない。貫かれた痛みと、押さえ込まれることで思い知る圧倒的な力の差を、勝手に悦んではしゃぎはじめるこの身体。羞恥に背筋が震える。自来也は、頼りなく彷徨うナルトの膝や踵を手に取ると、改めて自分の腰に絡めさせた。
　それからおもむろに、繋げた場所へと指を這わせる。
「……んぅ」
　いやらしく辿られれば、自分の濡れた襞が突き立てられた肉の塊を取り捲き、丸く食んでいるのを知覚する。自来也はそのまま指の腹で、ひくひくと震える入口の肉の薄さと弾力を愉しみ、再び前の襞を探った。
　小さな核が指先に捕えられる。
「あぁ……っ！！！」
　揉まれて、相手の頑丈な腰を間に挟み込んだまま、ひくりと内股を引きつらせた。そこを弄られれば、どれほど鮮烈な快感に襲われるか、ナルトは瞬時に思い出す。
　制止する間もなく指腹で押しつぶすように転がされ、堪らず髪を振り乱して叫ぼうとしたが、
「……っ、ぅく……！」
　上げた悲鳴が、部屋中に響くことは無かった。気が付けば、がっちりと顎を掴まれていた。　
　厚い掌に覆われて、声を堰き止められる。為された仕打ちに、ナルトは戦慄する。強い快楽を叫ぶ全身を震わせて、身体を硬直させた。
　自来也が先程、声が大きくなったら何とかすると言っていたのは、このことか。
　鼻は塞がれないので呼吸の自由は奪われないが、上唇から頬と顎をしっかりと大きな手の中に掴まれて、声は完全に封じられる。悲鳴は唇から洩れるが、手の平に包まれれて、くぐもり籠るだけだ。
　腰を跳ねさせ、身悶えるナルトを繋ぎ押さえ、理解が至ったのを見て取ったのだろう。強制的に心地良さを与え可愛がる指での施しを、容赦無く打ち続けながら、やがてゆっくりと、貫いたそれで奥を探り摩るように、動きはじめる。


「……っ！　……っ！　……っ！」
　しっかりと顎を掴まれながら、芽をやさしく弄られた。そうされながら、根元まで入れたもので腰ごと支配され、突き込み揺さぶる猛々しい動きを始められてしまう。声にならない悲鳴を上げながら、身を捩り、悶え苦しむ。
　とっくの昔に、抵抗らしい抵抗は全く出来なくなっていた。身体は、抉られる鈍痛に弱っていそうなものなのに、勝手に愉悦を追い、元気良く男を圧し包んでは、食い締める。それに応じて出し入れはきつさを増し、合わせるように大きく腰が上下するのを、ナルトには止める手立てが無い。
　押し入られれば凄まじい圧迫感に苦しみ、引き抜かれれば猛烈な快楽に襲われ、潤沢な粘液は、離れるのを嫌がるように切なく纏わりついた。
（ど、して……こんな、）
（ひゃ、あっ、ぁあん、も……ぅっ）
　嬌声は包む掌にぶつかっては掻き消え、ナルトの中だけで反響する。ただ強い雄に貫かれ貪り喰らわれるのを歓ぶ雌のように扱われた。
　足の間の割れ目の奥が熱くうずいて痛むのに、それが気持ちよくて、そこの肉がぴちゃりと音を立てるのが聞こえて、消え入りたくなるくらい恥ずかしい。想像以上の痛みと心地よさを同時に供され、許容量を超えた刺激を処理しきれず、神経も脳も悲鳴を上げる。
　長く伸ばした金髪を振り乱し、腰を捩っては深く飲み込まされたものを絞め付ける。
（も、ヤらし過ぎ……っ！）
　粘膜を擦り合わせると、感じやすい末梢神経同士が直に交歓しているような錯覚に陥った。それは、足を絡め合いながら感覚まで共有している気分になれる、今まで味わったことのない感覚だ。直接繋がる、ということがどういうことなのか、自来也はそうやってナルトに教える。
　呼吸を楽にするため、時々顎を掴んでいた手を放すのも忘れない。
　食い締めてくる狭さを楽しみながら、ゆるゆると最奥に弧を描くように揺らす。指先で芽を苛み続けながら、
「どっちがいい？」
　と尋ねた。問いを理解するやいなや反射的に、中の擦られる部分と、前のいじられる部分を、比べようとしたが、でもわからない。ただ、痛いのに、こんなに痛いのに、何故なのか、それがたまらなく嬉しくて……ひどく気持ちいい。
　自分の感覚は、おかしくなってしまったのだろうか。
「どっちもはナシだ」
「や、そんな、ぁ、わかんな……っ」
　気が狂いそうだ。
　両方を巧く構われるから、こんな状態に陥っているのだ。どちらもに決まっているのに、意地悪に図星を良い当てられ、堪らず首を振る。
「どっちもいいんだろ。ホントに欲張りだのォ、お前」
　重ねられたあまりに勝手な言い草に、泣きたくなった。身体だけでなく心まで簡単に、手の上で転がされるように弄ばれ、まるで自分の全てが把握されてしまっているような錯覚に陥る。
「だって」
　ままならぬ発音で、訴える。
「ん……？」
　少しでも、今のこの気持ちが伝わるように。
「エロ仙人が、……オ、オレに、」
　もつれる舌で必死に紡ぐ言を、自来也は辛抱強く待つ。
「してくれることは……全部、い、いこと、だから」
「……そう思うのか」
　答える声は、穏やかだった。汗を滲ませる胸元に舌を這わされ、与えられる快楽に酔い痴れながらうっすらと瞼を開けば、ちゅ、と優しい口付けが唇にも降ってくる。幸福だった。こんな状態では目の焦点すらろくに合わせられないけれど、声からは、自来也の口元が綻んで優しく微笑んでいる気配が、充分に感じ取れた。
「もう少しだけ、我慢しろ」
　深く挿し込まれるたびに溢れ出てしまう声を、完全に止めることができないが、音量を絞ることはできる。ナルトは努力してそれを小さな悲鳴や、甘えるような鼻声に変えて、自来也の耳を楽しませた。
　それから、改めて厚い手の平で口を覆われ、おもむろに刻む揺さぶりを早められる。
　限界まで穿たれては、引き抜かれながら摩り上げられた。
（ひゃ……ぁっ、あ、あぁんっ！　ぅくっ、や、ぁあああぁぁーーーっ！）
　繋がれたままよがり狂い、感じるままに喚き叫び散らすが、声は掌の中で握り潰されるように阻まれ、喉奥に絡んで、辺りに響くことはない。
（あ、ぁん、あ、ぅく、ぃやぁぁあ……っ！！！）
　ぬるぬると出し入れされ、好いところを狙って突き擦られる。眼球の奥に熱が溜まる。白い光が瞬き、何も見えなくなり、やがて意識を保つことすら難しくなってくる。
　されることは手荒く力に満ちて、でも、細やかで。それは普段、自来也が注いでくれる慈しみそのものだと、ナルトは思った。
　少なくとも彼は、そう信じることが出来た。


　数瞬、気を失っていたのだろうか。記憶が繋がらない。あらぬ場所を濡らされる感触に気付いて、我に返った。
　奥深く埋め込まれたものがぐっと質量を増したのを感じたと思った途端、その中の方に生暖かい液をぴしゃりと注がれる。
　身体の上で、男はわずかに呻き、荒々しく息を吐いていた。少女の尻肉を掴み、その丁度良い絞め付け、熱く軟い圧力と弾力を利用して、尚も沈みこませたものをしごき、絞る。そうやって最後まで出し切り、奥の柔らかな隙間へとじっくりと染み込ませてから、ようやく引き抜いた。
　嘘のように圧迫感が消える。ようやく身体の感覚を取り戻し、相手の支配から逃れることができた。
　姿勢を横寝に変えさせられる。ずっと開かされていた足を閉じ、安堵の余り全身の力が抜けた。
　どっと汗が出る。
　と同時に、奥の痛みと気持ちの良さが、挿し込まれていた時とはまた違う感じで、ぶり返してきた。
（い……痛っっってぇ……）
　蹲りたいが、身体が動かない。
　急激に低下してゆく体温。消えないばかりかじんじんと増してゆく快楽。放置される不安に、震えた。