夜の終わる音がした ...... 07
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「しかし、この術」
 抱きしめている身体が、あまりにも抱き心地良く抜群に柔らかいので、改めて身を離し、しげしげと眺めてしまう自来也だった。
 目の前の、形良く質量のある胸の脹らみに五指を滑らせれば、
「……っ」
 ひくりと肩を震わせ、目を細める。その反応や表情もまた愉しい。
「ホント、天才じゃのォ……」
「そ、そうかぁ?」
 褒められれば素直に喜んで、へへっと笑いを漏らした。
「これ、解くか」
 長くなって二つに結い上げられた髪を、ほどいていく。
 指で梳かしながら背中へと流し落とすと、腰から敷布まで届く長さがあった。
「おまえきっと、そのうちに、変化と影分身の応用だけで、どんな相手にでも勝てるようになるぞ」
「……? どうやって?」
「や、それは自分で考えろ」
 術の独創性は、実戦での応用を積み重ねて身に付けるものだ。今後もナルトは、きっと持前の発想力で技を進化させてゆくだろう。
 何しろ、現在眼前で展開する術の精度……肌の質感や、曲線美の、この威力は。
(センスと実践力は半端じゃねぇ)
 内心で舌を巻く。本来ならば、その才能をこんな術じゃなくて、もっとまともなところへ……と説教しなければならない立場ではあったが、自分のその手の忠告に、全く説得力がないことは自覚していた。
 特に今は。
(参ったな)
 触れる指が、離せない。手中にした触り心地のよいそれをするすると撫でれば、膝の上に抱いた相手は戸惑うように俯く。
 金髪を結い上げた項を見おろし胸元を覗けば、本当にこんなことをしていていいのだろうかと思うほど、それはいい眺めには違いなかった。唇が届く近さの肌の白さに見惚れるのを、今我慢する理由もない。
「どのぐらいの間この姿でいられる?」
「……一日中このまんまでいられるくらい、ずっと」
「そんなにか」
「だって、これ、全然チャクラいらねーもん」
 この変化はそれほど難しくないので、時間の長短はあまり関係ないらしい。人間より物体に化ける方が難しい場合もあるし、何より今は戦闘中ではない、とナルトは言う。
「眠っても解けねーし、多少痛くされても平気だってばよ」
「……そこまで具体的には聞いてねーよ……」
 嘆息する。吐いた息が掛かったのか、ナルトは僅かに首を竦ませた。
「エロ仙人は前に見た時、すっげー喜んでたもんな。好みだったらいいんだけど」
「まぁ正直、どストライクに好みだがの」
「ホント!?」
 声を弾ませて顔を上げ、
「カオとか、髪と目と肌の色とか、オレのままなんだけど、これでいい?」
 瞳を輝かせて訊いてくる。見せる相手に気に入られるのは、やはり嬉しいのか。いや、何もこの術でなくとも、どんな技についてであっても、ナルトは自来也がの評価を聞き逃したりはしないのだが。
「……異存は無い」
「髪の長さは? もっと長い方がいいかなぁ」
「充分だろ」
「じゃあさ、じゃあさ! スリサは? 腰はこんくらい細い方がカワイイかなって思うんだけど、胸と尻の大きさのバランスが、いまいちよくわかんなくてさー」
 ちゃらりと小さな石音が鳴った。胸元の首飾りを揺らして、誘ってくる。
「なぁ、エロ仙人的にはどう思う?」
「……」
 だんだん頭痛がしてくる自来也だった。
(さすがに……この石を目の前にすると我に返るのォ。はずせとも言えんし、ちとキツイな)
(ワシ、ホントにこんなことしてていいんだろうか……)
 ほんのついさっきまで、あんなに駄目だって思っていたのに、この体たらく。マズいことは重々承知で手を出した手前、ここまでやっといて今更引くつもりもないが。
(まったくこいつは……こんな展開になるとは思ってもみなかった)
 女の身体や、こういった行為に対する興味はあるのだろう。普段、そういう方面に関しては、言動のあけすけな師匠に対して、文句を付ける役まわりばかりな彼だが、本当は興味津々なのかもしれない。いや、そういう年頃だ。
 気持ちが決まったのを良いことに、屈託なく身体を擦り寄せてくる以上、大人は年長の者として、そこに付け込み教えるべきなのだろうか。
 人生の上で一番、身体的な変革が起こるこの時期を、里で過ごしていればもっと様々な選択肢があるのに、彼は師匠と二人きりで各地を放浪することになった。自来也が取る方策としては、例えば、相応に遊里の店にでも連れて行って男としての体験させてやることも、出来なくはない。
 そうした方がいいだろうか? こんな形で、本来の筆下ろしより先に、女としての経験を積ませることになってしまって、果たして良いのかと思う。
 でも、不特定の相手と経験させるより、こっちの方が、自分との方が、ナルトには合っているのではないか。
 そんな気がした。
 都合良く、こじつける。
 今更か。既に始めてしまっているのだ。これはもう自分のものだ。
「大き過ぎるかなぁ……。あ! もっと大きい方がいいとか?」
 無邪気な問いには、答えない。
 答える代りに、手の中の丸い輪郭に指を立て、きゅっと掴み上げてみる。
「……っ」
 途端、ナルトは息を止めて身体を固くした。様子を窺いながら、背を抱いていた方の手を骨に沿って滑らせ、腰から尾骨を探る。そのまま尻を撫でるように手を広げ、丸い肉を包みながら、指をその隙間へと食い込ませた。
「!!」
 あからさまな場所を探られ弄ばれる驚きに、ナルトは息を飲む。大人の男からその身に与えられる施しに、どう対応していいかわからないのだろう。両手を縋るように自来也の上腕に掛けたまま、身体を強張らせた。
「充分な出来栄えに見えるがの」
 胸と尻を揉みしだく指の力を徐々に強めながら、喉奥で笑う。
「他の部分も、どれだけ具合良くなっているか、これから試す」
 目の前の白い項に唇を寄せながら、そう宣告した。









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