空の色を埋める ...... 05
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 息を震わせながら膝を擦り合わせた。
「……んっ」
 呼吸は荒れ、喉が鳴る。締め上げに反応する身体は自然に捩れ、全身へ施された緊縛がナルトを追い込む。
 徐々に、脳の中は霞が掛かったように不明瞭になってゆく。
 何も考えられず、強引に与えられる快楽に、中途半端な自制心はあっけなく崩れ去った。
 あらゆる思考を停止させ、己の感受性だけを頼りに神経を開放してゆく。この相手から施される全てを漏らすことなく享受する方法を、彼は忠実に実践した。
「は、っ……ぁ」
 刺すような視線の執拗さに、欲求は肥大化してゆく。
 伏せていた目を怖々上げれば、視線は仮借なく一瞬で絡み取られた。
「……っ!」
 体を隅々まで熟視する眼が、こちらをひたりと見つめている。縄などよりよほど強烈に、ナルトの抵抗を奪う。一度その何もかも見透かすような眼光に捕えられてしまえば、もう簡単には逸らせない。彼は教えると言いつつ、決して手を下さずに、ナルトが自ら学び取り覚え込んでゆく過程をただじっと見守る。
「ぁ……っ……やぁ……っ!」
 堪らず首を打ち振るい、背筋を撓らせた。白く膨らんだ胸が柔らかに揺れ、長い髪が畳の上でうねる。
 媚態に吸い寄せられるように、自来也は迫り寄った。
「や、」
 あっという間に圧し掛かられて、次に何をされるか分からない焦燥にナルトは目を見開く。
 だが、身体は正直だ。本当は今すぐにでも、胸を揉みしだかれながら首筋に歯を立てられることを期待している。いつもそうされているように、めちゃくちゃに犯されたいと思っている。
 そして相手は、こちらの浅ましい欲求など当然のように見通していて、すぐには手を伸ばしてこないのだった。
「気持ちいいか」
 言わずもがなのことを意地悪に尋きながら、だが、答えなど待つ気もさらさらない。彼が手を伸ばすのは滑らかな肌ではなく、非情にも、その上を這う縄の結び目だ。
「もう少し絞めてやろうかのォ」
 信じられないことを言い出した。
 凝然と身体を固まらせるナルトのことなど一顧だにせず、背中でまとめ上げて縛った両手首の辺りに探りを入れる。 
「ここをこうして」
 縄の両端を探し当て、角度を見ながらぐっと締め直た。
「……っ!!!」
 余りの衝撃に、息が止まる。
 次の瞬間、彼を襲ったのは、杭打たれるような強烈な快楽だった。
「いやぁああ……っ! や……ぁっ」
 受け止め切れない。あられもなく身を跳ねさせる。
「おねがっ、緩めて、やだ、や、やぁぁあ……っ」
 喉を鳴らして、全身の骨を軋ませた。腰は勝手に両足の隙間へ掛けられた縄の食い込みを喜んで、ナルトの意思とは無関係にがくがくと震える。
 悲鳴が迸る。
「ひ、ぁ……っ、や、ぃや、やめ」
 身体を激しくくねらせながら、赦しを求めて叫んだ。
(こんな、こんなこと)
 不自由にのたうちまわる柔らかな肢体を、自来也は口の端に笑みを上らせて、愛おしいものを掬い上げるように優しく抱き寄せる。胡坐をかいた膝の上へと乗せ、震える耳朶に唇を寄せた。
「あ……ぁんっ」
 姿勢を変えさせられたことで、息が止まるほどの辛さと、縄目に刺されて昇天するような気持の良さを同時に味わう。その間にも、耳朶を舌でなぞられ、食まれ、辿る唇は頬を労わりながら降りてゆく。ようやく唇を吸われたかと思えば、あっという間に舌まで絡め取られた。
 はしたなく漏れて止まらない喘ぎを、まとめて奪い上げられる。
「んん……っ、ぅ」
 空気を求めて首を振り、口付けから逃れようとしても、
「やめていいのか? こんな途中で」
 と笑われる。
「違……っ、ど、して、こんな……っ」
 とうとう涙が弾けた。自分から縋りつけないもどかしさにナルトは泣く。
 相手の嗜好を受け入れることを覚えさせられてしまっている以上、どんな罵声も役には立たない。そうしている間も、腕の中に閉じ込められたまま、敏感に腫れて熱を持つあちこちを弄ばれるだけで、その度に縄は、人の手では為し得ない正確さでその身体を苛んでゆく。
 望んでいるような強い抱擁を、貰えないまま。
「お、お願い、お願いだから」
 心無い仕打ちを受けるみじめさに啜り泣きながら、もう赦して欲しいと懇願した。
 後に与えられる快楽の絶大さを思うと、怖しさに震える。だが、喉から手が出るほど欲しいのは、まさしくそれなのだ。
 口付けと愛撫は残酷なまでに際限なく続く。
 そして、与えられる心地良さや優しさと同じくらいの確かさで、刻々と間を置くことなく食い込む無残な縄縛が緩むこともなかった。









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